アラスカンマラミュートの莱夢のものがたり「第27話 莱夢、北斗のママになる」です。

アラスカンマラミュート Prime Snow 〜莱夢といた日々〜

 第27話 莱夢、北斗のママになる 

 莱夢は物心付いたころから、猫と一緒に育った子だ。それは、我が家にシンガプーラの伽凛がいたからにほかならない。莱夢を迎えた当時、伽凛はすでに生後10ヶ月を迎えようとしていたので、莱夢を受け入れるのにはかなりの時間を要した。ところが莱夢は怯える伽凛にお構いなく、日に日に大きくなるその身体で「伽凛お姉ちゃん、あそぼ!」と、押して押して押しまくった。伽凛は慣れつつも、莱夢がちょっかい出そうものなら、その太いマズルに「パーン」と猫パンチをお見舞いしたり、「それ以上近付かないで!」と手でつっぱねたりして拒否した。あまりに莱夢がしつこいと、半分爪を立ててパンチを繰り出し、厳しい教育的指導を行ったりもした。まるで「動物のお医者さん」のミケとチョビのように・・・。莱夢はそんな伽凛の仕草を見て、「しつこくすると叱られちゃうんだ」と遠慮したり、自分よりも小さな姉を思いやって、そっと見守るような気持ちを培っていったのだと思う。どんなに伽凛に邪険にされても、莱夢は伽凛が大好きだった。

アラスカンマラミュート 画像 猫が大好きな莱夢に、一緒に寄り添って眠るような、可愛い弟をつくってあげたい・・・。いつからか、そんなふうに考えるようになった私は、2001年の秋、我が家に新しい家族を迎えることを決めた。新しく迎えるならば、ぜひ里親募集の子猫にしよう・・・。かねてからそう決めていた私は、さっそくインターネットの里親掲示板で情報を集め始めた。ただし、ここで重要な条件があった。迎える子が猫エイズや猫白血病だと、先住の伽凛にまで感染してしまう。それを絶対に防ぐためには、迎える子猫の健康が100%保障されていなければならなかった。里親を募集している子猫の大半は、保護された子や、外猫との間に生まれた子ばかりなのが現実だった。でも、伽凛の健康を守るためには、ちゃんとワンクチンを受けている健康な親から生まれた子猫でなくては困るのだ。

アラスカンマラミュート 画像 里親募集の掲示板を閲覧するのが私の日課になった。そんなある日、気になる書き込みを見つけた。「9月6日、自宅で大切に飼っている猫が赤ちゃんを産みました。大切にしてくださる方にお譲りします。」添付されていた画像には、妙に目付きの鋭い、寅縞の子猫が写っていた。私はすぐにメールを打った。希望は男の子であること。先住の猫がいること。大型犬もいること。そして、先住猫の健康を守るため、子猫が病気では困ること・・・。返事はすぐに来た。子猫の父はノルウェジャンフォレストキャット、母はアビシニアンで、両親猫とも完全室内飼い。そして、ワクチンは毎年接種しているし、猫エイズ、猫白血病とも陰性とのことだった。先方は私のホームページを見てくれたらしく、「大切にしてくれそうだから」と、子猫を譲ってくれることを快諾してくれた。私としては、生後2ヶ月半くらいで子猫を迎えたかった。子猫の社会化期を逃してしまうと、結局莱夢を受け入れるのに時間がかかってしまうから・・・・。交渉の末、子猫の成長を待ち、生後2ヶ月半頃にこちらに移動することになった。

 さて、迎える子猫の名前はどうしよう。彼は北国からやってくる。また、子猫らしからぬキリリとした鋭い目付きも印象的だった。男の子らしく、涼しげな名前がいいな・・・。私にはとっておきの名前があった。いつかマラミュートの男の子と暮らすことがあったら、絶対に付けたいと思っていた名前。それが「北斗」。迎える子猫にふさわしい名前じゃないかな?こうして名前は「北斗」に決まった。先方に伝えると、「とても似合っている」と喜んでくれた。

アラスカンマラミュート 画像 2001年11月の半ば、北斗が移動してくることになった。先方が東京に用事があるので、そのついでに運んできてくれることになったのだ。待ち合わせは羽田空港。北斗のお迎えには、莱夢も同行した。と言っても、駐車場で待機するカタチになったけど・・・。先方は予定どおりの飛行機でやってきて、無事出口で待ち合わせることができた。先方のキャリーバッグから、こちらの用意したキャリーバッグに北斗を移し変える。写真ではずいぶん精悍な顔立ちの北斗だったけど、実物はあまりに小さく、あどけなかった。幼すぎて「にゃー」と鳴くこともできない。口を開けて、小さく「んあ!」と声にならない声をあげた。先方に別れを告げて、急いで駐車場に戻った。車の中、キャリーバッグ越しにはじめて対面した莱夢と北斗。莱夢は北斗の入っているキャリーバッグに鼻を押し当て、「フンフン」と匂いをかいだ。北斗がキャリーバッグの中で「シャーッ!シャーッ!」と、二度鳴いた。莱夢の興味は窓の外に移り、北斗は疲れたのか緊張してるのか、家まで一声も発せず、静かにしていた。

 いきなり北斗と莱夢を対面させるのは、ちょっとためらってしまう。北斗は新しい環境に慣れることに精一杯だろうから、初日はあまり接触させないようにした。夜になって、北斗をリビングに抱っこして連れてきて、試しに莱夢と対面させてみた。北斗はびっくりして背中の毛を逆立てた。まだ可哀想だよね・・・。翌日、同じように対面させてみると、北斗は私の手を逃れて、ソファの背もたれの上に飛び乗ってしまった。莱夢は「この小さな生き物はなぁに?」とばかりに、尻尾をふりながら様子を伺っている。北斗は背中を丸めて尻尾まで膨らませながら、ソファの背もたれの上を、横歩きしながら莱夢に向かって威嚇した。不思議そうに北斗を見ている莱夢。私は莱夢を呼んで「伏せ」をさせた。思い切って、北斗を莱夢のお腹のあたりに連れていってみる。すると、北斗は鼻を「スンスン」鳴らしながら莱夢の匂いをかぎはじめた。これなら大丈夫かも・・・。莱夢は舌先を小さく出して、遠慮がちに、そぉっと北斗をなめた。意外にも、北斗はじっとしていた。それどころか、暖かく深い莱夢の毛皮に包まれて、安心したように目を閉じた。

 こんなふうにして、莱夢と北斗はすぐに仲良しになった。莱夢は北斗が可愛くて仕方がないらしく、大きな身体を小さく縮めて、北斗に気を使いながら遊んだ。北斗は莱夢にまったく遠慮せず、時には莱夢の口の中に手を突っ込んだり、莱夢の鼻を思いきり叩いたりしてじゃれた。莱夢は予測不可能な北斗の動きにドキドキしながらも、子供をあやすように上手に対応した。時には度がすぎる北斗の行動に「キャン!」と悲鳴をあげることもあったけど・・・。

アラスカンマラミュート 画像 北斗はいつの間にか、莱夢を「お母さん」だと思うようになっていた。驚いたことに、莱夢のオッパイを「ちゅぱ!ちゅぱ!」と、音を立てて吸ったりもした。莱夢は莱夢でまんざらでもないらしく、出ないオッパイに吸い付く北斗を静かに見守るようになった。その表情は、とても穏やかでおおらかで優しい、母の表情になっていた。その愛の深さが話題になって、2002年の秋には「ペット大集合!ポチたま」の取材を受けるくらいだった。

 こうして、莱夢は北斗のママになった。今でこそ、さすがに北斗は莱夢のオッパイは吸わないけれど、それでもしっかり親子の愛情で結ばれている。