アラスカンマラミュートの莱夢のものがたり「第3話 運命の電話」です。

アラスカンマラミュート Prime Snow 〜莱夢といた日々〜

 第3話 運命の電話 

 9月は仕事が忙しく、残業と休日出勤が続いていた。疲労は思考を短絡化させた。現実から逃げるように、私はマラミュートとの暮らしに思いを馳せてばかりいた。ああ、マラミュート。どんなブリーダーさんなんだろう。どんな子がいるんだろう。電話だけでもしてみたい。話しだけでも聞いてみたい。9月のある土曜日、私はとうとう受話器をにぎりしめ、運命の番号をプッシュした。

 コール音のあと、電話口に明るい声の女性が出た。ブリーダーさん本人だった。私はしどろもどろに語った。ずっとマラミュートに憧れていたこと。共働きの上、はじめて犬を飼うこと。ウルフグレイの女の子を探していること。ウチには先住のニャンコがいること。支離滅裂だったと思う。ブリーダーさんは、ときどき言葉を挟みながら、ゆっくりと私の話しを聞いてくれた。
 「子犬はまだ産まれてないけど、7ヶ月になるキキちゃんていう女の子がいるわよ。『魔女の宅急便』のキキちゃんから名づけたの。リボンみたいに大きな耳の、すごく綺麗なウルフグレイの子よ。明日にでも見にいらっしゃいよ。」
 そのひとことで、私はブリーダーさんを訪ねる決心が付いた。

 翌日、電車で熊谷に向かった。ブリーダーさん宅には、2組のお客様が見えていた。4ヶ月の女の子、ホーリーちゃんのオーナー、Y夫妻。ホーリーちゃんの姉妹、五月(めい)ちゃんのオーナー、T夫妻。Tさんは、のちに私の「救いの女神」となった女性だ。ホーリーちゃんは既にY夫妻のもとで暮らしていたが、五月ちゃんはまだブリーダーさんのもとで暮らしていた。Y夫妻はホーリーちゃんの里帰りに、T夫妻は五月ちゃんに会いに来ていたのだった。私は2組のカップルに混じり、犬舎を眺める場所に陣取って犬達の様子を見た。

アラスカンマラミュート 画像 どの子も生き生きとしていて明るく、人懐っこかった。口の中に手を入れても、噛んだり唸ったりする子はいない。どの子も愛情いっぱい、のびのびと育っていた。しかも、ガーファンクルをアルファとした50頭近いマラミュートの群れで暮らしているため、犬としての秩序や礼儀もわきまえていた。

 犬達は順番に犬舎から出て、運動場で遊ぶ。私の目当てだったキキちゃんが出てきた。キキちゃんの姿をカメラにおさめつつ、ファインダー越しに迫ってくるキキちゃんを見て思った。で、でかい!7ヶ月ってこんなに大きいの?嬉しそうに私達のほうに駆け寄ってきて、立ちあがって挨拶してくれた。キキちゃんは、顔立ちといい立ち振る舞いといい、とてもキレイな子、いわゆるショータイプの子だった。そのクセとても人懐っこくて、オテンバだった。こんなに大きなワンコをいきなり我が家のリビングに迎えたら、だんな様は卒倒するだろう。伽凛だって、どんな反応するかわからない。私はこの元気とパワーに打ち勝てるのか??ちょっと不安になってきた。

 その日はお宅にお邪魔して、ブリーダーさんやT夫妻らとマラミュート談義に花を咲かせた。すっかりはまり込んでしまった私は、毎週のように熊谷に通うようになった。